
リゼが暴れ回り、すっかり日が落ちてしまいもう今日は休むこととなった。
もちろんケルビンがぶつくさと文句をいって、リゼはムッとしたのは言うまでもなかった。
「たっく明日は、早いからなさっさと寝ろ」

「うん……」
後ろから着替えもせず、そのままベッドに雪崩れ込んで寝てしまったレオのいびきが聞こえる。
「おやすみ」
ハインはそう言うと柱の陰へと消えていった。
それを見ていたケルビンは、ハインの後に付いて行った。
「おい。寝るのではなかったのか?」
「ちょっと星を眺めにね……。なんて、そんな臭い嘘は君には通用しないか……」
ハインはやれやれとため息をついた。
「フン。明日に支障来さなければ詮索したりはしない」
そう言い、背を向けて階段を上っていった。

「分かっているよ。そう遠くには行かないさ。本当に星を眺めるぐらいの距離だよ」
小さい声だったが、確かにケルビンの耳に届いた。
翌朝
リゼ達はマグリールの居る宿の前にいた。

リゼはマグリールに外で話さないかと、言いに行ったが、頑として出ようとしなかった。
「どうせあの恐ろしい猫がいるんだろう!」と怯えていた。
それをケルビンにつたえると、背中にある弓に手を伸ばし、今にも宿屋の中に飛び込んで矢を射ろうとしていた。

「ちょっとケルビンさん!」
「黙れ小娘!あの、チビ!射貫き殺してやる!」
バン!!
宿屋の扉が大きな音を立ててあいた。

「け、ケルビン!!」
マグリールは慌てて床に這いつくばった。
そして、側にいたリゼの足を掴む。
「お、お願いだお嬢さん!!助けてくれぇええ!!」

「あ、あの……」
しがみつくマグリールと、怒れ狂うケルビンを交互に見た。
そして、助けを求めるようにレオを見た。

この宿の店員だろうかレオは話していた。
「あの、殺し合いになるかもしれないのに気にならないんですか?」
「いつもの事よ。うちの宿は客が暴れることがしばしばあるの!もう一々気にしちゃいられないわよ!」

このままでは具合が悪いので、とにかくリゼは何とかケルビンを宥めた。
ケルビンは「勝手にしろ!」とマグリールが見えない壁の陰に寄りかかった。
「職務怠慢だって言いに来たんだろう!そうさ!あの仕事は危険すぎて、報酬が見合っていない!
気になるんだったらお前が行くんだな!勝手にしやがれ!」
確かにギルドは少ない報酬のこともある。
だが、今度の仕事はさほど悪いとは思えなかった。

先ほどの態度とは違い、リゼは驚き呆れた。

「フン。話はついたか……。ああいう奴だ。臆病者の腰抜けめ!」
「あの、もう落ち着いたのですか?」

「ああ。あんな鶏野郎、殺してやる価値もない……。このご時世、安全と金を約束する仕事なんかそうあるもんか!あいつはそれがちっとも分かっちゃいない!」
まあ、奴の代わりに仕事をこなして報酬をいただいてやるとするか……。
そして、リゼ達は目的地の洞窟へと向かった。



張り切って洞窟の中に入ったが、途中スケルトンに襲われ矢が突き刺さっていた。

「たっく!突っ走るな!」
ほらよ!とポーションを渡した。
「うん」

洞窟はマグリールが言ったとおり、危険なものがいっぱいあった。
途中落石、落盤に何度も襲われた。

それらの数はもううんざりするほどあった。
リゼは口に出さなくても、その怒りは顔に見る見る表れていった。

「うん。不満を言わなくなったな」
ハインはリゼを見てフムと頷いた。
「ああ。良い進歩だな……」
レオも同様に頷く。
「ま、弱い小娘だが、どうにもならないという訳ではなさそうだな」
ケルビンの普段あまり見せない口角があがった。

「うっわーゾンビ……。ん?」

マグリールの言っていた任務は、日記をとってこいというものだった。
その日記が今リゼの視界に飛び込んだ。
「あった!!」

そっと手を伸ばして日記を荷物袋へしまう。

「やったじゃんか!」
レオはわしわしとリゼの頭をなでてやった。
「うん!」
そして、元来た道をもどっていった。

道中、リゼはマグリールの職務怠慢のことをモドリン・オーリンに言うべきか迷っていた。
確かに、本当の事を言うべきだが、それを言えばマグリールは仕事を永久になくしてしまうかもしれない。
するとケルビンがリゼの悩みに気づいたのか
「同情するなとは言わん。お前の好きなようにやれ」とポンと頭を叩いて、先を歩いて行った。

モドリン・オーリンには黙っていることに決めた。
ケルビンが、彼に職務怠慢の事を抜きに事の次第を報告した。
「いや、もう俺はあいつとは組むのは止める。あいつも俺といるのは嫌そうだからな」
「じゃあ、リゼ達の方と行動を共に?」
「ああ、そうする」
そう言うとケルビンはリゼ達の方へとゆっくりと歩いて行った。